9Sep

起業物語、スロータイム
「18時に第一応接室に来てくれ」 「後3時間かぁ」 E部長から連絡があり、 時計の針が15時を 指していた。 ランチから約3時間 経過していたが、 1秒1秒がゆっくりに感じた。 プロボクサーとしてリングに 上がる順番を待つ心境にも 似た不思議な感覚だ。 同じ控え室に勝って帰ってくる者、 負けて帰ってくる者。 「涙、笑い」両極端が 入り混じった空間。 二つにひとつ、その後の人生を 大きく動かす、短くてスローな 時を刻み込むときである。 そうそう、一度自動二輪車で 事故を起こした時、バイクから 放り出され地面に叩きつけられる までの時の刻まれ方もそうだった。 スローモーションでこれから 生きるのか? 死ぬのか? 二つにひとつ選択する瞬間だ。 貴重な体験はゆっくり 味わってくれ! という神様の心配りなのか? このスローな時を刻む感覚を 体験する時、 生きている! いや、生かされているのを感じる。 「涙・笑い」「生きる・死ぬ」 自分は今、何を思っているのか? E部長に会社を辞めると告げたら、 おまえに任せているプロジェクトは どうするんだ! 無責任なやつだ! と言われるのか? そうか、夢を取るなら 夢を追いかけてがんばってくれ。 と言われるのか? 二つにひとつ。 簡単にいえば円満退社できるのか否か? しかし、どちらの結果としても、 辞めることは事実として 受けとめねばならない。 家族を支え生きて いかなければならない。 そんなスローな時も必ずやってくる。 ボクサーの時はトレーナーから、 「おし、出番だぞ!」 「オッシャー!」 と壁をひと殴りして ボルテージを上げてから リングに向かった。 今回は逆だ、 冷静に対処したい。 時(とき)に背中を押されながら 気がついたら第一応接室の前にいた。 コンコン 失礼します。 前を読む 次を読む
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